「占い師」「占い」は、なぜ問題なのか―――「宗教としての占い」について考える


ある方とツイッターで「占い師」および「占い」について議論になったのですが、ツイッターでは到底扱いきれないテーマなので、この記事を投稿します。


オセロ・中島知子さんを食い物にした「自称元占い師」の存在によって、占い師が注目されています。
中島さんの問題については、参議院議員・有田芳生さんのブログが最も的確な内容であると思いますので、ぜひご覧ください。
http://saeaki.blog.ocn.ne.jp/arita/2012/03/post_90de.html
http://saeaki.blog.ocn.ne.jp/arita/2012/03/post_ded4.html
http://saeaki.blog.ocn.ne.jp/arita/2012/03/post_aeff.html
http://saeaki.blog.ocn.ne.jp/arita/2012/02/post_c5ee.html


さて、私は、現在日本で行なわれている「占い」のほとんどは宗教(の一種)だと考えています。
宗教の定義は多数存在するようですが、恐らくその全てに「占い」の大多数が該当するでしょう。
「霊魂」「霊界」などの宗教的概念を用いて、一般的ではない(社会的に認められていない)、「部内者」だけが共有する様式で行動するのであれば、それは宗教と考えるのが自然です。
仮に、「占い師」と「相談者」の二人の関係であっても、宗教団体での「教祖、信者の関係」の変形でしかないからです。


中島さんは、生活の些細なことまで、いちいち自称元占い師の指示を仰いでいました。
この自称元占い師と中島さんの関係は、まさにカルトでの教祖と信者の関係と基本的に同じ構造であることを、有田さんは指摘されています。
カルトでは、教祖と信者は「1対1の濃密な関係」で、信者同士の関係は希薄だと言われます。
自称元占い師と中島さんの関係も、「1対1の濃密な関係」であるということなのです。


仏教、キリスト教およびイスラム教は、多数の国で信仰されており、長い歴史を持つ宗教です。信徒および聖職者からなる大規模な組織が、各国にあります。
そのような宗教においては、外部にも教義が公開されており、「宗教的行動様式」が広く知られているため、信徒らの行動が、ある程度予測できます。1,000〜2,000年を超える年月を経て社会的に認められていることは、反社会的活動を行なう可能性が低いと考えることができます。
また、組織化されていることは、構成員相互の監督または監視が、ある程度期待できます。


もっとも、伝統宗教であっても、その一部には反社会的活動に走る場合もあるので、注意が必要です。
イスラムを掲げるテロリストは世界中に脅威を与えています。キリスト教会の一部がカルト化した事例もあります。


他方、占いは、非常に多種多様です。多数の国で共有されるものではありません。各「流派」の歴史は、伝統宗教に比べればはるかに短いものが大部分のはずです。
組織ではなく、個人で開業している占い師が圧倒的に多いのではないでしょうか。組織はあっても、小規模なものがほとんどでしょう。相互監督など、期待できるでしょうか。
これでは、「占い師」の行動は非常に予測が困難です。「何をされるか分からない相手」に相談することは、非常にリスクが高いと言わざるをえません。
これは、新宗教新興宗教)についても言えることです。


「教祖の○○は△△の生まれ変わり」「霊界は実在する」などという宗教の主張について、それが事実と証明する証拠が示された事例を、私は知りません。
占い師が「占いの結果が正しいことの証拠」を提示した事例も、私は知りません。「結論ありき」の世界。その点でも、占いは宗教です。


「事実である証拠のないことを事実と考える」「鵜呑みにする」という心の習慣は、危険です。
その意味で、私は、全ての宗教に批判的な立場です。それでも、前述の理由で、全ての宗教を否定するつもりはありません。
伝統宗教は、社会福祉の先駆者であり、現在でも人々の助け合いを促進していることも忘れてはならないと考えています。宗教のために多くの人の血が流された歴史も知っていますが。


占い情報は、毎日のようにテレビで無批判に垂れ流されています。多数の雑誌に掲載されてもいます。これも、伝統宗教とは大きく異なる点です。
このような、マスメディアに占い情報が氾濫する状況によって、カルト、悪質商法および詐欺の被害にあいやすい心が形成されることを私は危惧しています。


「遊びのつもりなら、占いはOK」と言う人がいますが、それに私は同意できません。
本人の主観がいかなるものであっても、占い情報を気にすること自体が、真偽の不確かな情報を鵜呑みにしやすい状態に陥っていると言えます。


「統計の手法を用いているので、占いは信用できる」と言う人もいますが、これは「統計学を全く勉強したことがない人」であることは明らかです。
統計の手法を部分的に取り入れてもっともらしくしても、それは「統計もどき」でしかありません。


私は、占いは、医療機関の受診またはカウンセラーなどの援助が必要な人を、適切な社会資源から遠ざけるものでもあると判断しています。商売であれば、客を奪われたくないと考えるのが自然でしょう。


もっとも、全ての「カウンセラー」が信頼できるわけではありません。医師にも、問題の多い者がいます。
カウンセラーには、スーパーバイザーが必要です。カウンセラー同士のネットワークに所属していることが、カウンセラー選びの重要な基準となるはずです。
医療機関およびカウンセラー選びについては、ブログ「不登校・ひきこもり」で取り上げたので、そちらもご参照ください。
http://blog.livedoor.jp/psw_yokohama/archives/51705236.html
http://blog.livedoor.jp/psw_yokohama/archives/51283051.html
http://blog.livedoor.jp/psw_yokohama/archives/51778131.html
http://blog.livedoor.jp/psw_yokohama/archives/52253939.html


なお、「やや日刊カルト新聞」記者・エイトさんも、私とはやや異なる視点ですが、占い師を批判されています。そちらも興味深い内容でした。
http://dp.tosp.co.jp/index.php?action=blog_view_entry&ocd=user&oid=5129972&eno=320&tno=-1&page=1&guestAuthCode=