オカルト盲信ではなく科学的な、NHK「幻解!超常ファイル ダークサイド・ミステリー」


狐憑き」は、統合失調症または躁鬱病(感情障害、気分障害)で人格が変わってしまう様子を見た昔の人が、原因が分からなかったために「狐が憑依した」との迷信につながった、と考えることができます。
同様に、多くの「超常現象」は原因不明ではなく、既に明らかになっている事実から説明可能です。


それを、あまり理屈っぽくなく、娯楽性を大切にしながら取り上げるのが、NHKの「幻解!超常ファイル ダークサイド・ミステリー」です。
http://www.oricon.co.jp/news/movie/2022436/full/
http://cgi4.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=001&date=2013-03-25&ch=10&eid=07641


初めは「オカルト盲信番組」のような雰囲気でしたが、これは、オカルトを盲信する人にも抵抗なく視聴してもらうための工夫なのでしょう。
明日、第2回が放送されます。お薦めです。
http://www.nhk.or.jp/bs/t_documentary/

「在特会」などによる「韓国・朝鮮人差別」への反対運動


一昨日から今日にかけて、「在特会」などによる「韓国・朝鮮人差別」への反対運動が様々なメディアで報じられています。
どこの国籍であっても、無抵抗の子供相手に口汚く罵ったり、「殺せ」などと呼び掛ける「在特会」などのネトウヨの言動は論外です。


東京スポーツ(一昨日)

 テレビでもおなじみの民主党有田芳生参院議員(61)の事務所に「殺すぞ」との“殺人予告”や「朝鮮へ帰れ」といった意味不明の批判が殺到している。一体、何が起きているのか? 最近、東京・新大久保など在日韓国人が多い繁華街で「朝鮮人を殺せ!」「出てけ」とコールするデモが行われた。一部の人間を侮辱するこれらの「ヘイトスピーチ」に対する議論が盛んになり、立ち上がったのが有田氏だった。

「これまでもデモで『人を殺せ』と言っているのは知っていたけど、最近では在日韓国人の多い新大久保や、大阪の鶴橋といった商店街でやっている。『殺せ』『毒飲め』『首つれ』とかね。表現の自由を超えていると思い、歯止めをかけないといけないと思った。日本人として、とても恥ずかしい」

 有田氏がこう話すデモは、一部団体により各地で行われてきた。コールの内容通り、在日韓国人に対する人種差別的発言が多い。かねて過激な言動が知られていたが、かなり直接的な言葉が出てくるようになり、有田氏ら国会議員が今月半ばに院内集会を開くなど、声を上げる事態となった。

(中略)

「2日くらい前から『有田をぶっ殺せ』となってきた。彼らには『韓国人も日本人を侮辱しているじゃないか』という思いがある。それはそうですが、同じレベルで憎しみ合っていたらキリがない。一部の韓国人がやっていることを、僕だっていいとは思っていない。僕が言っているのは『殺す』とか『レイプする』とか平然と言うのは日本人として恥ずかしいということ」

(中略)

 このデモ団体の言動は在日韓国人への中傷にとどまらないという。

生活保護問題のときには(デモに対して)批判の声を上げたおじいちゃんを突き飛ばして、蹴っ飛ばしてもいる。映像もある。フィリピン人親子(カルデロン一家)が日本に不法滞在していることが問題になったときは、中学生の娘さんが通っている学校に行って、罵声を浴びせてもいる。何でもやるんですよ」

(中略)

 北朝鮮による拉致問題の会合の周辺にも出てくる。

横田夫妻も『自分たちも誤解される』と怒っている。彼らはブルーリボンをつけて『朝鮮人を海に沈めろ』なんて言うけど、妨害しているのと同じですからね」

http://www.tokyo-sports.co.jp/nonsec/social/126822/


田中龍作ジャーナル(昨日)

 市民や国会議員が東京都公安委員会にコースの変更を求めていたにもかかわらず、公安委員会が主催者の申請を認めたため、予定通りコリアタウンでの他民族排撃デモとなった。

 有田芳生参院議員らが国会内で民族差別に抗議する集会を開き、マスコミが報道するなどしたこともあり、新大久保や大阪鶴橋で吹き荒れるヘイトデモは、多くの国民の知るところとなった。

(中略)

 きょうは民族派右翼・一水会顧問の鈴木邦男さんが初めて現場を見に訪れた。「悲しいですね。日の丸がかわいそうです。嘆かわしいですね。こんなことではオリンピック招致などできない。公開の場で、桜井(誠・在特会会長)が話すというなら出ます。デモ隊の中に知り合いがいた。警察にデモをやめさせろと言うつもりはないが、こちらも日の丸を立ててデモをやりたいですね」。

 鈴木氏はかねてから在特会を「彼らは右翼でも愛国者でもない」と批判していた。

(中略)

 レイシストはわずか120名(公安刑事によるカウント)。歩道は両側とも「仲良くしようぜ」などと書かれたプラカードを持ったカウンターの市民で溢れた。レイシストの2倍をはるかに上回る数だ。カウンターの市民たちが合唱する「ザイトク帰れ」がレイシストたちを抑え込んだ。筆者が聞く限り、さすがのレイシストたちもきょうは「殺せ」を口にしなかった。

 有田芳生議員は「“殺せ”と言えなくなったのは世論の勝利」とツイートした。

http://tanakaryusaku.jp/2013/03/0006905


日刊SPA!(今日)

 ここ最近、東京・新大久保や大阪の鶴橋など在日韓国人が多い繁華街で「朝鮮人を殺せ!」「出てけ」となどとコールするデモが開かれている。今まで行われた同様のデモでは、日の丸や旭日旗を掲げた集団が「朝鮮人ガス室に送れ」などと掲げた板を持ちながら練り歩き、参加者が「朝鮮人の女はレイプしろ」と語っている動画がYouTubeにアップされるなど、過激化の一途を辿っている。

 3月の最終日曜日にもまた、新大久保でそうしたヘイトスピーチを叫ぶデモが行われた。この日のデモでは、上記のような過激な文言は陰を潜めたものの、春休み中の休日とあって子供も多く見られる新大久保の町中は、日の丸や旭日旗を掲げながら練り歩く嫌韓デモ集団に対して、異議を唱えるカウンターデモの集団や商店主らが揃い踏みし、一時騒然となった。

http://nikkan-spa.jp/414354


J-CASTニュース(今日)

31日のデモには在特会ほか複数の団体が参加、数百人が集まった。「朝鮮人は国へ帰れ!」「ゴキブリ!」などと声を上げながら道路を進むデモ側に対し、反レイシズムなどをうたう抗議側もこれに匹敵する人数を集め、歩道などから呼びかけを行った。抗議派の中にはデモ側を歩道から追いかけながら、「在特、お前らが帰れ!」「ネットに帰れ!」「国の恥だ!」などと中指を立てて叫ぶ人もあり、これにデモ側の参加者が殴りかかろうとするなど、あわや乱闘寸前の場面が何度も見られた。
機動隊も一時的に歩道を封鎖、デモと抗議活動を引き離そうとし、日曜の新大久保は一般市民とデモ、抗議活動、警察が入り乱れる混乱状態に陥った。
警視庁は参加人数や逮捕者の有無などを明らかにしていない。

http://www.j-cast.com/2013/04/01172107.html


<関連のツイートのまとめ>
http://togetter.com/li/472229

なぜTPPは危険なのか(5)


21〜23日の東京新聞の記事「チェックTPP」より。


21日

チェックTPP<4>医療 皆保険崩壊に懸念
(中略)
 Q 混合診療とは聞き慣れない言葉だ。
 A 健康保険が使える保険診療と、保険が使えない新薬や最新の治療法を使った自由診療を組み合わせたのが混合診療だ。日本では原則禁止で、仮に行えば保険診療分も患者が負担しなければならない。厚生労働省は「有効性、安全性が確認できないものに税金や保険料を投入できない」と説明している。
 Q 混合診療を解禁すると、米国にどんな利益があるの。
 A 米国の巨大な製薬会社や保険会社は日本でシェア拡大を狙っている。解禁で保険適用が認められれば、自由診療を利用する人が増えて、高い薬も売れる。高い診療費をカバーするため、民間保険に入る人も増える。
 Q なぜ、皆保険制度が崩壊するの。
 A 政府は保険財政が厳しい中、高額な治療や薬を保険の対象にしにくい。病院や製薬会社が高額の自由診療や最新薬ばかりに力を入れるようになれば、保険で賄える範囲が縮小し、保険制度が機能しにくくなる、と医師会は主張している。
(中略)
 Q ほかに米国が求めそうなことは。
 A 営利企業医療機関の経営に参入できるよう求めてくるかもしれない。日本では医療機関は「営利を目的としない」と定め、株式会社の経営は認めていない。営利企業が参入すれば、高額な自由診療の提供を目指し、混合診療解禁を強く求めてくるだろう。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/economic_confe/list/CK2013032102000148.html

国民皆保険制度および食品安全規制の崩壊は、TPP参加で最も懸念される点です。


22日

チェックTPP<5>自動車 米、日本車流入を警戒
(中略)
 日本の自動車メーカーは米国での現地生産を進めるが、一方で二〇一二年は約百七十万台の自動車を米国に輸出した。日米両政府が環太平洋連携協定(TPP)の事前協議で、米国が日本車に課している関税を当面は維持すると大筋合意したことで、自動車業界ではTPP参加のメリットを計るのが難しいと懸念の声が上がる。
 Q 日米両国の自動車にかかる関税はどうなっているの。
 A 日本が輸入車に課す関税は既にゼロ。これに対し、米国は乗用車に2・5%、大型SUVなどを含む「トラック」には25%の関税を課している。この結果、日本自動車工業会自工会)によると、日本企業は部品も含め自動車分野で年間約九百億円の関税を米国に払っている。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/economic_confe/list/CK2013032202000199.html

日本の自動車メーカーは、自分たちにはメリットがあると考えているようですが、そのメリットは予想より小さなものになりそうです。


23日

チェックTPP<6>関税 利害対立個別に協定
(中略)
 Q そもそも関税って何。
 A 各国が輸入品に対し課す税金のこと。海外から安い品物がたくさん入ってくると、自国の産業がダメージを受けるので、関税をかけて守る目的がある。関税自主権は、国が自ら関税を自由に決められる権利のことだね。
 Q TPPに参加したら関税自主権がなくなるのかな。
 A 失うことにはならない。今は世界的に市場に任せる自由貿易を目指す流れがあり、TPPも原則として関税撤廃を目指すが、各国は維持したい関税を交渉で主張できるからね。ただ、それも交渉次第だ。
 そもそも日本で関税自主権が問題になったのは、幕末から明治時代にかけてのこと。鎖国をしていた日本が開国に踏み切った際に結んだ日米修好通商条約(一八五八年)が、関税自主権のない不平等条約で、一九一一年に回復するまで非常に不利益を被った。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/economic_confe/list/CK2013032302000186.html

交渉次第で、関税自主権を失うことにもなりかねないことは、以下の記事からも懸念されます。


日刊ゲンダイ(19日付け)

 米韓FTAは「TPPのひな型」だ。悪名高きISD条項も盛り込まれている。「投資家が自由な経済活動を侵害された場合、国家を訴えることができる」というやつだ。もっとも、適用されるのは韓国内に限られる。韓国企業が米国内で活動する場合は、「米国の国内法が優先される」と序文にある。つまり、自由な経済活動をできるのは米国企業だけなのだ。韓国はなぜこんな喜劇的な不平等協定を締結したのか。途上国の開発経済が専門の立教大教授・郭洋春氏(経済学)が言う。

「FTAの交渉にあたっていた韓国外交通商部の担当者が内容を理解しきれずに協定を結んでしまった可能性が否めません。韓米FTAは序文と24章から構成されていますが、韓国語の翻訳版からは296カ所の誤訳が確認された。英語の原文はA4サイズで700ページ。2ページに1つの割合で間違えていることになります」
(中略)
「私も韓米FTAの英語の原文にあたりましたが、米国独特の法律用語が多用され、二重三重の言い回しが使われていた。何回も目を通してようやく『米国の国内法が優先する』と書かれていることが理解できました。何人かの学者に確認しても同じような反応です。つまり、英語が堪能なだけじゃ理解できない内容なんです。よほど自由貿易協定に精通していて、高度な法律知識を兼ね備えていないと太刀打ちできない。恐らく、頭でっかちの外務省の担当者は“自分たちは大丈夫。韓国のようにヘマはしない”とタカをくくっているでしょう。そこが決定的に危うい。私は同じ轍を踏むとみています」(郭洋春氏)

http://gendai.net/articles/view/syakai/141535


日刊ゲンダイ(16日付け)

 安倍首相がTPP交渉参加を正式に表明したことを受け、TPP担当の甘利大臣が経済効果の試算を発表した。が、その数字の根拠は参加ありきで見積もられたインチキ。あまりに非現実的な想定ばかりでア然なのである。

 試算では、TPPに参加し、全ての関税が即時撤廃されれば、10年後の実質国内総生産(GDP)が0.66%、3.2兆円増加するという。国内産品が安い輸入品に取って代わられることで2.9兆円のマイナスになるが、逆に輸出が2.6兆円増える。さらに消費者は安い輸入品を買うことができるので、実質的に所得が増えたとみなされる効果があり、消費が3兆円増え、投資も0.5兆円増える。バラ色の試算である。
(中略)
「影響が大きい33品目の農産物は3兆円の損失と見積もられていて、特に砂糖については、輸入品によって国内産が100%駆逐されるという前提です。ただ、そうなると、さとうきび農家は完全に失業してしまう。ところが試算には、失業者の雇用対策にかかる費用などがまったく含まれていないのです。それどころか、『当初1、2年は失業しても、10年後には新たな仕事に就いている』と能天気な想定になっている。そんな簡単に新たな仕事が見つかるわけないでしょう」(農政関係者)

 今回の試算は、関税撤廃だけが対象で、「追加的な国内対策を計算に入れない」とされている。つまり雇用対策どころか、影響を受ける農家へのベラボーな補助金の費用も一切含まれていないのだ。

 そもそも即時関税撤廃というが、交渉を主導する米国では、日本車に対する関税維持を求める業界や議員が強硬だ。保険や医療費への影響も計算外。こんなあり得ない想定で3.2兆円の効果と言われても説得力ゼロだ。

http://gendai.net/articles/view/syakai/141490

食品の安全基準をアメリカに合わせることになれば、医療費の負担は一層重くなるかもしれません。
食糧自給率が低下すれば、人口が増え続ける世界が食糧不足に陥ったとき、いくらおカネを出しても買えなくなることもありえるのですが、そのようなリスクも安倍晋三氏は予想できないのでしょうか?

「在特会」などによる「韓国・朝鮮人差別」への抗議集会(3)


14日の韓国・朝鮮人差別への抗議集会について、今日も二つのメディアが取り上げています。


東京スポーツ
http://www.tokyo-sports.co.jp/blogwriter-watanabe/5504/


「NEWSポストセブン」での朴順梨氏のコラム

2009年12月に、在特会在日特権を許さない市民の会)を中心とする十数名が京都朝鮮第一初級学校に押しかけ、街宣活動を行った『京都事件』の映像が集会の冒頭で流されると、会場中がしんと静まり返り、彼らの怒号だけが響き渡った。映像を初めて見た私を含め、ほとんどの参加者がやりきれなさから、声も出ない状態に陥っていたことだろう。
 
2007年に設立された在特会の活動は、この事件が起きた2009年にはすでに活発化していた。しかし大手メディアが取り上げることはほとんどなく、昨年あたりからニュースサイトなどで、ちらほらとデモの様子が紹介される程度だった。そしてようやく国会議員が腰をあげたことで、今回初めて集会が開催された。
会ではジャーナリストの安田浩一氏や、一水会最高顧問の鈴木邦男氏による基調報告などが行われたが、なかでも印象的だったのは、龍谷大学法科大学院教授の金尚均氏の発表だった。子供を京都朝鮮第一初級学校に通わせていた“当事者”である金氏は、「ユダヤ人は出ていけ」などの中傷発言に民衆扇動罪が適用されるドイツの刑法を例にあげ、日本でもヘイトスピーチを規制する法を整備できるかについて、熱をこめた口調で語っていた。
 とはいえ正直な話、元在日の私としては法が施行されたとしても「よくやった!」と言えるかは、現時点ではあまり自信がない。
なぜなら法律で取り締まったとしても、デモ参加者や支援者が「特権を持った在日韓国・朝鮮人によって、日本人が虐げられている」「在日韓国・朝鮮人の多くは反日の思想を持っているにもかかわらず、日本に居座り続けている」 と信じる限り、根本的には解決しないからだ。それに「在日が日本の法にまで介入した」という言説が生まれ、ますます怨嗟がつのる可能性だってある。
 しかし特定の相手に対し「死ね」「殺せ」とヘイトスピーチを繰り返す集団を、街中で見たくはない。私が元在日だからということ以上に、どう考えてもおかしな事態だと思うからだ。

http://www.news-postseven.com/archives/20130323_178517.html


「京都事件」の動画。
http://www.youtube.com/watch?v=7u3Nr8xyfkk


20日には、「民団新聞」「統一日報」でも紹介されました。
http://www.mindan.org/shinbun/news_bk_view.php?page=1&subpage=4774&corner=2
http://news.onekoreanews.net/detail.php?number=72720&thread=01r04


昨日は、抗議集会の呼び掛け議員である参議院議員・有田芳生さんが、ブログで「私が人種差別主義者・排外主義者を容認しない理由」を公表されました。
http://saeaki.blog.ocn.ne.jp/arita/2013/03/post_2af7.html


反対運動関連ツイートのまとめ。
http://togetter.com/li/472229

なぜTPPは危険なのか(4)


2011年11月06日付けの精神科医斎藤環氏のコラム(毎日新聞)より。

 例えばTPPで日本の農業が破壊されるという意見がある一方で、過保護な農業政策は一回厳しい競争にさらされればいいのだという意見もある。すでにこの種の議論において、「事実」や「現場」に即した議論の限界が露呈しているのではないか。相容(あいい)れない事実や経験が乱立している場合、一歩引いた視点から全体の構図を眺めておくことも無意味ではないだろう。

 歴史人類学者のエマニュエル・トッドは、近著「自由貿易は、民主主義を滅ぼす」(藤原書店)において、まさにTPP的な貿易のあり方に強く警鐘を鳴らしている。

 自由貿易で国外市場へ向けた生産が増えれば、企業のコスト意識が高まり、国内の労働者に支払われる賃金もコストカットの対象となる。労働力が低賃金ですむ中国などに集中した結果、どの国でも給与水準が低下し、国内需要が不足しはじめる。それゆえ自由貿易固執し続ければ、社会の不平等と格差は拡大し、優遇された超富裕層が社会を支配することになる。かくして、自由主義が民主主義を破壊するという逆説が起こる。

 こうしたトッドの見立てが真実ならば、TPP反対運動と、例えば「ウォール街を占拠せよ」と名付けられたニューヨークデモにおける人々の主張とは、格差社会への抗議と民主主義の擁護という点で一致することになるだろう。

 ラカンマルクス主義者という奇妙な肩書を持つ思想家スラヴォイ・ジジェクは、ニューヨークデモにおける演説でこう述べている。「常に金持ちのための社会主義が存在する。彼らは私たちが私的財産を尊重しないと非難するが、2008年の経済破綻で毀損(きそん)された私有財産の規模は、私たちが何週間も休みなく破壊活動にいそしんだとしても及びもつかない」(http://www.imposemagazine.com/bytes/slavoj-zizek-at-occupy-wall-street-transcript)

 そう、自由主義経済の名の下で、政治は富裕層だけに徹底した保護を与えようとする。多様な危機的状況の中でも、最も迅速に政治的介入がなされるべき危機こそが「経済危機」であるからだ。

(中略)

 政治的立場の違いにもかかわらず、ジジェクとトッドの主張が構造的に似かよってしまうこと。なんと、資本主義と自由貿易がゆきつく“理想の体制”が中国である、というアイロニーまで同じなのだ。

 確かにジジェクが言うように、資本主義と民主主義の結婚は終わりつつあるのだろう。資本主義(≒自由貿易)が最もその矛盾(恐慌)に直面することなく、安定的に富を生み出すシステムモデルが、現代中国のような統制された超格差社会であるとすれば。アメリカや欧州連合(EU)、そして日本が富裕層のための社会主義国家に変貌するのも遠い未来のことではないのかもしれない。

 この流れを反転させるべく、ジジェクは「コミュニズムへの回帰」を、トッドは「プラグマティックな保護主義」を提唱する。現実性という点から言えば、トッドの立場に分があるようにも思われる。いずれにせよ二人に共通するのは、システムよりも個人を、つまり壁より卵を擁護する立場だけは決して譲るまい、という覚悟のほうだ。

 それがどのような名前で呼ばれようと構わないが、私も彼らの側に立ちたい。ならば答えは自(おの)ずと明らかだ。私は日本のTPP参加に反対である。

http://mainichi.jp/opinion/news/20111106ddm002070084000c.html


「資本主義、自由主義による民主主義の破壊」については、映画監督・想田和弘氏も指摘しています。
http://documentary-campaign.blogspot.jp/2013/03/tpp.html
http://documentary-campaign.blogspot.jp/2013/03/tpp_16.html


自由貿易固執し続け」「社会の不平等と格差は拡大し、優遇された超富裕層が社会を支配する」状況が実現しつつある(実現した?)のが、アメリカ社会なのでしょう。
NHKBS世界のドキュメンタリー」の「パーク・アベニュー 格差社会アメリカ」では、自分たちが優遇されるように政治を歪める「超富裕層」の姿などが描かれています。これは明日深夜(正確には明後日)再放送されます。お薦めです。
http://www.nhk.or.jp/wdoc/backnumber/detail/121129.html


TPPは、国民の生活を守るために必要な規制を行なう自由まで奪われるリスクが高いものです。
アメリカに拠点を置く多国籍企業には都合が良くても、それ以外の大多数の人々にとっては、生存権すら脅かされ、ただ搾取され続ける社会になりかねないのです。


東京新聞の記事は、そのようなリスクを報じています。


17日

 安倍晋三首相は十五日、環太平洋連携協定(TPP)の交渉参加を正式表明した。しかし、水面下で行われてきた日米の事前協議では一貫して米国ペースだった。本交渉では、後発参加国に不利な条件が課せられることは首相自身も認めるが、既に「不平等」は現実になっている。
(中略)
 政権交代し安倍政権になっても米優位の構図は変わらない。首脳会談で合意した共同文書の最終段落には米側が要求する「自動車」「保険」問題を解決することが明記された。
 首相はこの文書で「聖域が守られた」と主張するが、最終段落の表現は、米国ペースで進んだ事前協議の「集大成」ともいえる。カトラー代表補は三月二日に来日。十日間ほどの交渉の結果、日本は、米側が求めてきた自動車の関税維持要求を、受け入れた。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013031702000100.html


17日

チェックTPP<1>ISDS条項 企業と国家の紛争解決
(中略)
 A 日本の政府や自治体、企業にも影響がある制度なんだ。ISDS(国家と投資家の間の紛争解決=図参照)条項と呼ばれる。
 外国企業(投資家)が、進出先の政府が法律や規則を不当に変更したことによって損害を受けたと考えた場合に、政府や自治体を訴え、賠償金を得ることができる制度だ。企業の立場からみると、進出した国の裁判所で訴えると、不利な判決を受ける恐れがある。ISDS条項の制度では、企業は国連や世界銀行傘下の第三者機関に訴えることになる。
 Q この条項が入ることは決まったの?
 A 交渉内容が公表されていないので詳細は不明だが、参加国のうち豪州は反対の立場だ。訴訟大国の米国が、訴訟を乱用するのではと警戒している
 日本国内でも「訴訟が乱発されれば、環境規制や食品の安全規制などが脅かされる」と心配する声が上がる。米国企業が北米自由貿易協定(NAFTA)にあるISDS条項を使い、カナダ政府とメキシコ政府を訴えて多額の賠償金を得たり、米国と自由貿易協定(FTA)を結ぶ韓国政府が米国企業に提訴されたことが背景にある。
 ただ、企業側は政府の差別的対応で被害を受けたことを具体的に証明する必要がある。米企業が敗訴する例も少なくない。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/economic_confe/list/CK2013031702100003.html


18日

チェックTPP<2>食卓への影響 安全基準 低下の恐れ
(中略)
 Q たくさんの輸入農産物の価格が下がるなんて、お財布にやさしいね。
 A そうでもないかもしれないな。花や綿などはすでに関税ゼロだ。輸入農産物全品目の中で関税が「ゼロ」の品目は24%、「0%超〜20%以下」は48%を占めている。つまり、七割超の農産品がすでに関税20%以下なんだ。輸入農産物の今の平均関税率は11・7%で、値下げ余地は意外と狭い。
(中略)
 A 価格が安くなるのは、ありがたいことだね。ただ、食の安全から考えると手放しで喜んでばかりはいられないよ。食品の安全基準は、国ごとに異なっている。これをどうそろえるか、ということもTPP交渉の重大なテーマなんだ。
 日本やTPP交渉に参加するオーストラリア、ニュージーランドは総じて食品安全基準が高いからいいが、途上国では安全への意識がそれほど高くない。米国のように大規模農場で農薬を大量に使い生産する国も、日本と安全基準は異なる。交渉を通じて、日本よりも低い安全基準に統一されれば、食の安全に対する不安は高まるだろうね。
 Q 具体的にどんな違いがあるの。
 A 例えば遺伝子組み換え食品の扱いだ。日本は遺伝子組み換え食品の身体への影響が読み切れないので、この技術を使った食品の表示を義務付けている。だが、遺伝子組み換え食品の生産を増やしたい米国は日本が行う表示義務廃止を求めそうだ。食品添加物でも違いはある。日本では約八百種類しか使用が認められないが、米国では三千種類も使うことができる。米国は農薬残留基準も日本の六十〜八十倍も緩い。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/economic_confe/list/CK2013031802100006.html


20日

チェックTPP<3>農畜産物 乳製品や砂糖打撃
(中略)
 環太平洋連携協定(TPP)に参加した場合、政府は最悪のケースで農産物の生産額が三兆円減少するとの試算を出した。万が一、コメや乳製品など重要品目の関税が撤廃・削減されると、高い関税で守られてきた農畜産物には大きな影響が及ぶことになる。
 Q どうして高い関税で国内の農畜産物を守っているの。
 A コメや砂糖など100%超の高い関税で守られている農畜産物は、裏を返せば価格競争力が弱いということだ。こうした農畜産物は、大規模農場や低賃金の労働者を使って大量生産する外国産の方が安く、関税が撤廃されると外国産が市場を席巻するかもしれない。
 農林水産省の調べでは、TPP交渉参加国のオーストラリアの平均農地面積は、日本の千三百倍の約三千ヘクタール、米国が七十五倍の約百七十ヘクタールと桁違い。
 日本の水田は農家当たり一〜二ヘクタール程度と狭く、生産コストは外国産にはかなわない。安い外国産のコメが大量に輸入されると、国内のコメ農家はやっていけないと関係者は危機感を強めている。
(中略)
 Q 輸入品と差別化が難しい農産物はどうなるの。
 A 例えば砂糖は、外国産と見た目や味で差はつきにくく、産地で砂糖を選ぶ消費者も少ない。だから現在、328%の関税が撤廃されると、政府は全量が輸入品に置き換わると試算している。
 砂糖の原料はテンサイやサトウキビで、産地の北海道、沖縄県、鹿児島県にとっては、気候条件などからほかの作物への変更は難しい。農業だけではなく地元の関連産業や雇用に大きな影響を与えることになる。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/economic_confe/list/CK2013032002000133.html

「在特会」などによる「韓国・朝鮮人差別」への抗議集会(2)


今日の朝鮮日報および毎日新聞でも、14日の韓国・朝鮮人差別への抗議集会について(参議院議員・有田芳生さんのコメントも)取り上げていました。
昨日、新大久保のコリアンタウンでは、「在特会」による「韓国・朝鮮人差別デモ」だけでなく、「レイシストをしばき隊」による「人種差別反対デモ」も行われたそうです。
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/03/18/2013031800864.html

 デモなどで特定の人々を公然と侮辱する「ヘイトスピーチ」が目立つようになっている。海外ではドイツやイギリスなどヘイトスピーチを処罰対象としている国もあるが、日本では「野放しの状態」(専門家)。標的となった人からは「危険を感じる」という声も上がっている。【川崎桂吾】

 「殺せ、殺せ」「ゴキブリ」「日本からたたき出せ」

 2月上旬、外国人が多く暮らす東京都内の繁華街でデモがあり、そんなシュプレヒコールが飛び交った。デモは特定の外国人を排斥する目的でインターネットで告知され、男女100人以上が参加した。

(中略)

 デモを問題視した超党派の国会議員も抗議集会を呼びかけ、今月14日に200人以上が参加。また17日の同様のデモでは、コースの途中に「仲良くしようぜ」などと書かれたプラカードを持った人々が集まり、抗議の意思を示した。運動を呼びかけた男性会社員(30)は「もう見過ごせないと思った」と話した。

 ◇海外では処罰対象

 ヘイトスピーチは社会の平穏を乱し、人間の尊厳を侵すとして、諸外国で規制されている。ドイツはデモや集会、ネットの書き込みで特定の集団を侮辱する行為を「民衆扇動罪」に定め、5年以下の禁錮刑を科している。国内に住む外国人を「駆除されるべき集団」などと表現する行為もこの罪に当たる。

 イギリスの公共秩序法も同様の行為に7年の懲役刑、フランスや民族対立から内戦が起きた旧ユーゴスラビアモンテネグロも罰金刑を設けている。

 しかし日本では規制がない。名誉毀損(きそん)や侮辱、脅迫罪は特定の個人や団体を対象にしており、国籍や民族などで分けられる不特定の「集団」に対する言動には適用できない。東京造形大の前田朗教授(刑事人権論)によると、表現の自由に反する恐れのあることが、規制に踏み出せない理由という。

 ただ前田教授は「個人への侮辱が罪になるように、集団への侮辱を規制しても表現の自由には反しない。日本だけが時代遅れの『ガラパゴス』になっている」と話す。高千穂大の五野井郁夫准教授(政治学)は「東京に五輪を招致しようとしている日本でヘイトスピーチがまかり通っては、国際的な信用を失いかねない」と指摘。今回、抗議の意思を示した市民が現れたことに着目し「表現の自由を狭めかねない行政による規制の前に、こうした動きが起きたことを評価したい。差別を許さない市民意識を育むきっかけになれば」と話している。

 ヘイトスピーチ(憎悪表現)

 人種や国籍、ジェンダーなど特定の属性を有する集団をおとしめたり、差別や暴力行為をあおったりする言動を指す。ネオナチ運動に対処するため1960年にドイツで制定された民衆扇動罪や、「人種差別の扇動に対しては法律で処罰すべきだ」と宣言した国連の人種差別撤廃条約(69年発効、日本は95年に加入)を背景に、各国が規制に乗り出している。

http://mainichi.jp/select/news/20130318k0000e040194000c.html


レイシストをしばき隊のWebサイト。「完全非暴力」とあります。
http://shitback.tumblr.com/
http://shitback.tumblr.com/about


レイシストをしばき隊の代表者・野間易通氏の略歴。
http://www.kawade.co.jp/np/search_result.html?writer_id=12294

「在特会」などによる「韓国・朝鮮人差別」への抗議集会(1)


桜井誠氏が会長を務める「在日特権を許さない市民の会」(在特会)などが、韓国・朝鮮人の殺害をそそのかすなど、異常なデモを行なっています。
そのような韓国・朝鮮人差別への抗議集会が、先日、参議院議員会館で開催されました。
この集会の呼び掛け議員の一人、有田芳生さんのツイートを中心にまとめたので、よろしかったらご覧ください。
http://togetter.com/li/472229


16日付けの「NEWSポストセブン」の記事より。

 ここ最近、全国各所で「嫌韓デモ」が行われている。一部のデモでは、あまりに激しい口調のヘイトスピーチ(人種、皮膚の色、国籍、民族など、ある属性を有する集団に対して貶めたり暴力や差別的行為を煽動するような侮辱的表現を行うこと ※龍谷大学法科大学院教授・金尚均氏による定義)や罵詈雑言の書かれたプラカードが掲げられることもある。
 たとえば、2月9日に東京・新大久保で行われたデモでは日の丸や旭日旗を掲げ、「朝鮮人ガス室に送れ」というシュプレヒコールや「朝鮮人 首吊レ 毒飲メ 飛ビ降リロ」と書かれたプラカードを掲げる人が出た。2月24日に行われた大阪・鶴橋のデモは「鶴橋大虐殺をするぞ」といったコールも出た。
 デモの参加者の論理としては、「数々の特権を持った在日韓国・朝鮮人によって、日本人が虐げられている」「在日韓国・朝鮮人の多くは反日の思想を持っているにもかかわらず、日本に居座り続けている。早く祖国へ帰るべきである」「少数民族である在日韓国・朝鮮人が日本の政財界やメディアを牛耳っており、多数派である日本人が虐げられている。これはまさに南アフリカアパルトヘイトと同じ構図である」といったものがある。
 しかし、この動きに反対する集会が3月14日、参議員会館で行われた。「排外・人種侮蔑デモに抗議する国会集会」と題されたこの集会は、参議員議員の有田芳生氏らが中心になって呼びかけられた。有田氏は前出のデモを「異常」と2月26日にツイッターで発言し、国会でもこの問題を取り上げることを表明しており、それが実行される形となった。
 会の冒頭で有田氏は「放っておけばよい、という声もあるが、看過できない状態になっている」「『殺せ』などの発言は表現の自由の一線を超えた」などと、集会を呼びかけた理由を解説。その後、これらのデモに詳しいジャーナリストの安田浩一氏による基調報告や、弁護士の上瀧浩子氏や前出の金氏によるヘイトスピーチに対する法律的解釈も議論された。
 そして、デモの映像を観たという右翼団体一水会最高顧問の鈴木邦男氏は「映像を見て非常に悲しくなりました。日の丸の旗が可哀想だと思いました。日の丸は日本の優しさ、大和の国の寛容さを表すもの。それが排外主義的なものに使われている。日の丸が泣いていました。血の涙を流していました」と愛国者の立場からの疑問も呈された。
 会の最後には「集会宣言」が行われ、「私たちは韓国や北朝鮮との間の国際問題を原則に基づいて解決をはかっていく。しかし在日韓国・朝鮮人などを差別し侮蔑する行為は、公共の平穏を乱し、人間の尊厳を傷つけるもので、決して許されるものではない。私たち集会参加者は、排外主義、レイシズム(人種差別)の広まりを押しとどめる意志をここに表明し、これからも行動していく」と締めくくられた。

http://www.news-postseven.com/archives/20130316_177289.html