国会議員の定数および歳費を増やそう!


民主党の2009年(政権交代時)のマニフェストには、「国会議員の定数削減」が記載されていました。
また、副総理の岡田克也氏は、国会議員の歳費削減を行なうべきと主張しています。


どちらも、「政治主導」の実現を一層困難にする愚策です。
「国会議員は国民から選ばれているので、政治主導は国民主導である」と民主党元代表小沢一郎氏は語っています。その通りだと思います。


日本の国会議員の定数は、欧州各国と比べて多くはないようです。
歳費削減は、国会議員の政策立案能力をそぐばかりでなく、優秀な人材が国会議員の職を避ける傾向を強めるでしょう。


参議院議員・有田芳生さんのツイッターより。

二木啓孝氏。「議員数と国民総数の比較。▼英国 1050議員/6000万人▼仏国 898議員/5900万人▼独国 755議員/8200万人▼日本 723議員/1億2500万人▼米国 532議員/2億8000万人。米国は大統領制であることと州議会議員が多いことが他国と条件が異なる」。

http://twitter.com/#!/aritayoshifu/status/165245534150471680


立命館大学政策科学部准教授・上久保誠人氏の論考。

政治家は「定数削減」で国民に媚びず、
堂々と増税そのもので勝負せよ

 ここから本題に入る。野田政権は「社会保障と税の一体改革」実現のために、「国会議員定数削減」を打ち出している。消費税増税に国民の理解を得るために、まず国会議員自らが「身を切ること」が必要だという考え方だ。

(中略)

 だが、消費税増税財政再建することと国会議員定数削減はなにも関係がない。比例定数を80減らしても年間30億〜50億円程度の節減に過ぎず、国家予算の一般会計約90兆円に対してなんのインパクトもないからだ。

(中略)

 日本の国会議員数は他の先進国と比べて多くない。日本は衆参両院合計752人で、英国(1863人)、ドイツ(724人)、フランス(898人)より少ない。人口10万人当たりの国会議員数でも、日本0.57人に対して英国2.2人、ドイツ0.81人、フランス1.49人だ。(社会実情データ図録などを参照)。これ以上定数削減を行ったら「官僚支配」が強まるのは明らかだ。

 日本の通常国会では、予算審議に加えて、各省庁から出される100以上の法案が審議される。議員の数が少ないと、1つ1つの法案作成に国会議員が関与できなくなる。それを端的に示すのが、民主党政権「政治主導」の失敗だ。

 鳩山政権は、政調会による与党事前審査を廃止し、各省庁内で大臣・副大臣政務官の「政務三役」が精査した法案を国会に提出する、「政治主導」の政策立案システムを採用した。だが、政務三役の3−4人だけで、膨大な数の法案を1つ1つ精査することは不可能で、むしろ官僚支配が強化されてしまった(前連載第33回を参照のこと)。日本より国会議員数が多い英国では、100人以上の与党議員が政府の役職に就任して政策立案に関わっている。膨大な法案を作成するには、むしろ与党議員の数をもっと増やすべきという考え方もあり得るのだ。

(中略)

 政策立案に対する政治家の関与が減り、官僚支配が強まる「政治の死」を防ぐには、安易に議員定数を削減すべきではない。むしろ国会議員の数を増やし、1つ1つの法案への与野党双方からのチェック機能を高めるべきなのだ。

国会議員の歳費は高いのか:
国際比較で考える

 岡田克也副総理が消費税増税のために「身を切る」方策の1つとして、議員定数削減に加えて「国会議員の歳費8%以上削減」を提唱している。果たして日本の国会議員の歳費(給与)は高いのだろうか。

 単純に金額を比較すれば、日本の議員歳費(1人年間2200万円)は、英国(1人年間970万円)など他の先進国の中で最も高い。但し、日本では歳費の多くが議員活動費となっている。歳費から政治家個人の政治団体に対して寄付されるという形で、私設秘書の給与、事務所費などの経費として使われているのだ。実態として、裕福な世襲議員などを除けば、多くの議員が個人の生活費として使える金額は、一般サラリーマン並みでしかない。

 また、日本では「中選挙区制」により政策よりも利益誘導が重視される選挙が行われてきた歴史経緯から、国会議員の活動の多くが地元で行われている。地元活動とは、個人後援会、支援団体、その他各種団体、地方自治体、地方議会議員などとの連絡や要望等の吸い上げ、中央官庁への陳情の媒介、選挙民の国会見学や東京見物のツアーコンダクター、冠婚葬祭への出席等であり、経費の大部分がそれらに費やされる。

 このような活動は米国議員活動に似ている。だが、米国では下院議員に対して、歳費以外に年間1億円以上の職務手当が別途支給されており、多くのスタッフを雇用して対応することができる。一方、日本の議員が地元対応に使える経費は、米国より少なく明らかに中途半端な金額だ。そして、日本では地元での活動経費が足りないことから、「政治とカネ」の問題が頻発してきた。

(中略)

 要するに、日本では「中選挙区制」の伝統から、議員の地元活動が重視されてきた。それは米国の議員活動に類似するが、米国よりも使える経費が少ないために「政治とカネ」の問題が起こってきた。だから、日本の国会議員の経費を削減したいならば、英国のように「小選挙区制」を定着させることで、議員活動をカネがかかる地元中心から、国会での政策立案中心に変えていくことが必要となるのだ。

http://diamond.jp/articles/-/15943?page=2


引用した文章では、どちらも日本の国会議員の定数が誤っていて、正しくは722名です。
歳費の国際比較では、現在は極端とも言える円高であることを忘れてはならないでしょう。


一票の格差を解消するために選挙制度を改める必要があるのは理解できます。
しかし、そのために全体の定数を削減するのではなく、比例代表の仕組みを変更すれば良いのではと思います。


衆議院は、一票の格差を解消するために減らした「小選挙区の定数」の分だけ、あるいはそれ以上「比例代表の定数」を増やす。同時に、「比例代表単独立候補」を廃止し、比例代表は全て「小選挙区との重複立候補(いわゆる比例復活)のみ」とする。
参議院も同様に、一票の格差を解消するために減らした「都道府県選挙区の定数」の分だけ、あるいはそれ以上「比例代表の定数」を増やす。


「非拘束名簿方式」を採用する参議院では、比例代表単独立候補でもカネがかかります。衆議院の「選挙活動を行なわないため億単位の貯金ができる」比例代表単独立候補の議員のみ排除すれば、国会議員関連の「仕分け」は充分です。
政策立案能力を向上させるための「公設秘書の増員」も検討すべきです。現在は3名のみ。政治主導実現には、これでは戦力不足でしょう。