国会議員叩きは、国民の利益にならない!(1)


昨日の時事通信の記事より。

 初当選した参院議員らが任期前の歳費を自主返納できるようにした改正歳費法の施行を受け、参議院事務局が対象の59人に案内を出したところ、期限の13日までに58人が手続きをしたことが事務局への取材で分かった。残る1人は16日に申請するほか、新旧の正副議長も、役職で上乗せされている分の返納を申し出た。
 国会議員の月給に当たる歳費は、任期が1日だけでも1カ月分(129万7000円)が支給される。働いていない期間の給料支払いに批判が高まり、国庫への返納を可能とする改正法が6日に全会一致で成立した。
(中略)
 取材に対し、有田芳生参院議員(民主党)は「労働なき報酬はあり得ないと昔から主張していた身。借金を抱えて大変だが、筋は通さないといけない」と強調。

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2010081400038


有田さんの「大変な状況」については、このブログで以前に取り上げました。
http://d.hatena.ne.jp/psw_yokohama/20100211/p1


与党時代の自民党の国会議員は、古く狭い旧議員会館を利用せずに別の事務所を借りるなど、企業献金などにより優雅な生活をしていたようですが、自民党以外の政党に所属する国会議員には、借金に悩む人も相当居るでしょう。
自民党所属でも、下野した現在では企業献金が減り、新築した議員会館(先月開館)を利用する議員が増えたという情報もあります。


全ての国会議員が「与党時代の自民党の国会議員並みの裕福な暮らしをしている」「私腹を肥やしている」という誤った認識に基づいての発言は、テレビでコメンテーター、アナウンサーなどの口から時々出て来ます。
ある強盗事件について「国会議員の所に行けば良かったのに」とする「街の声」がテレビニュースで流されたことがありました。日本社会には、政治を汚いもののように扱い、国会議員を叩くことを良しとする風潮があります。


それによって、政治が、国民の生活が良くなるのでしょうか。


マスメディアが垂れ流す「情報公害」の数々。
「官僚依存はいけない」と言うのに、「議員歳費が高額」と批判する矛盾。3名の公設秘書のみでは「官僚依存脱却」など無理なので、歳費から私設秘書を数名以上雇う必要があります。そうなると、議員の手取りは大した額になりません。自民党政権では、官僚をシンクタンク代わりとして活用(依存)していたので、公設秘書は少人数で済んだ(済ませていた)のです。米国上院議員の秘書は数十名も居ると聞いたことがあります。先月の参議院選挙のマニフェストで、民主党が「国会議員の経費を2割削減します」としたのは大変残念です。マスメディアによる世論の誘導が原因でしょうが、その程度では財政危機の克服にはほとんど効果がないはずです。それでも歳費を削減するのであれば、公設秘書の大幅な増員が不可欠です。前述のマニフェストには「参議院の定数を40程度削減します」「衆議院は比例定数を80削減します」との記載もあります。確かに国会議員が多すぎるような気もしますが、議員定数を削減するとしても、公設秘書の増員と引き換えにすべきです。
「高額な歳費を得ているのだから、その分しっかり働け」と言うのに、新議員会館を「豪華」と批判する矛盾。議員個別のスペースは、旧議員会館では約40平方メートル、議員室および秘書室の2部屋しかなく、業務に支障をきたす状況でした。新議員会館では約100平方メートル、4部屋(議員室、秘書室および応接室など)となりましたが、これでもまだ狭いと私は思います。有田さんも「現実は国際標準になったということではないか。これまでの会館には何度も入ったことがあるが、資料であふれ返っている部屋が多かった。仕事場として狭すぎたと思う」と述べられています。
http://saeaki.blog.ocn.ne.jp/arita/2010/07/post_ced0.html
(この記事に寄せられた五十嵐茂さんのコメントも必読です)


任期が始まっていない期間にも歳費が支払われるのは問題で、その分の自主返納または「歳費の日割り化」は当然です。
しかし、「公設秘書の定数の少なさ」「旧議員会館の狭さ」「議員の身分の不安定さ」などを取り上げず、「高額な歳費」「格安賃料の国会議員宿舎」などを強調するのは片手落ちです。
国会議員を叩くだけでは(叩くべき議員も存在しますが)、まともな人が国会議員になろうとしなくなります。それでは国民の生活は改善されません。
現在の国会議員の収入は「仕事をしないほど増える」という構造になっています。私設秘書を雇わず、調査活動を行なわなければ、歳費等がそのまま自分の懐に入るからです。このおかしな構造を変えるためにも、歳費カットと同時に公設秘書の定数を最低2、3名増やすべきです。「ほとんど何もしない議員」の存在を、有田さんは指摘されています。
http://arita.tanigawa.info/


民主主義の基本は、有権者が、自分たちの利益を代表する議員を選ぶことにあります。
国民の代表としての国会議員に、自分の収入よりも国民(特に、その議員に投票した有権者)の利益を優先して働いてもらうには、議員活動を支えるという視点も大切です。