雁屋哲氏を攻撃する前に、本当に攻撃すべき事実があるのか調べましょう(当たり前のことながら)


一昨日発売の「週刊新潮」に、「『美味しんぼ雁屋哲の『北朝鮮』への異常な愛」と題した記事がありました。
http://www.shinchosha.co.jp/shukanshincho/backnumber/20091126/


その記事では、雁屋哲氏は北朝鮮の体制を支持しており、「自虐史観」の持ち主であるかのように報じられています。


私は、中学生のときに「美味しんぼ」を読み、雁屋氏が相当に調査及び取材をされ、誤った観念ではなく正確な情報に基づいて原作を執筆されていると(子供ながら)思っていました。その印象は、雁屋氏がジャーナリスト・有田芳生さんの推薦文を昨年12月に投稿されたことで雁屋氏のブログを読みましたが、変わりませんでした。


だからこそ、週刊新潮の記事には驚きました。


早速、週刊新潮が批判していた雁屋氏の今月16日のブログ記事にアクセスしました。

「今日、以前に取材を受けた朝鮮人民民主主義共和国(長いので、以下、共和国と書きます。北朝鮮という言い方は共和国の人間にとって、侮蔑的に捉えられるようです)の雑誌の記者だった方に、朝鮮第三初級学校の日朝友好バザーに招かれて行ってきました。

(中略)

 私は、金正日のしていることは許せないと言う思いを禁じ得ませんが、金正日による拉致問題を非難するのと、共和国の人間に厳しく当たるのとは話が違うと思います。

(中略)

 政治を抜きにして(と言うことは実際には難しいことですが)、一人の人間同士のつきあいとして共和国の人間と仲良くしたい、と言うのが私の思いです。

(中略)

北朝鮮(共和国)の人間を色眼鏡をかけて見ることはやめにして、一人一人の人間として、共和国の人達と、つきあっていただきたいと思います。」

(中略)

 日本と、朝鮮半島の歴史は、そもそも、大和朝廷天皇一族が朝鮮から来たところから始まって、二千年以上続いている。
 その途中、秀吉のような誇大妄想狂が朝鮮に攻め入ったり、明治維新以後西欧化以外に自分たちの生きる道を見いだせなかった日本の指導者たちによる朝鮮の植民地化などが現在のKoreansの日本に対する反感・嫌悪を作りだした物だが、実は日本人は、朝鮮・韓国人が好きなのである。
 それは、「冬のソナタ」に始まる韓流の勢いが一番身近だかが、何のことはない、日本の芸能界、スポーツ界、文学界、ではとっくの昔から韓国・朝鮮系の人間が人気スターの座を多く占めてきたのである。
 朝鮮半島から来た天皇を崇拝し、朝鮮・韓国を出自とする芸能人・スポーツ選手にあこがれる、さらに、日本の代表的な芸術である陶芸は朝鮮から移入された物である。
 ここまで朝鮮・韓国を有り難がる民族は日本人しかいない。
 それは何を意味するのか。
 私は、日本人と、韓国・朝鮮人の間に深いつながりがあるのだと思う。

http://kariyatetsu.com/nikki/1175.php


週刊新潮は、雁屋氏が北朝鮮を「共和国」と呼ばれることを「北朝鮮が民主的だという印象を与えようとしている」としています。
しかし、「朝鮮民主主義人民共和国」では「長い」ということ及び「北朝鮮という言い方は共和国の人間にとって、侮蔑的に捉えられる」ことを理由としていることを雁屋氏は明記されています。「金正日のしていることは許せないと言う思いを禁じ得ません」とも意思表示されています。
そもそも、共和国は「皇帝又は王等の君主の居ない国家」を意味する言葉であって、民主的か非民主的は問いません。民主的ではない共和国は、過去にも現在にもいくらでも存在します。
日本には事実上の君主(憲法では象徴)である天皇が居るので共和国ではありませんが、一応民主主義国家ではあります。


大和朝廷天皇一族が朝鮮から来た」のくだりを、週刊新潮は「多くの朝鮮系の人が日本に来たのに、雁屋氏は『天皇一族だけが朝鮮から来た』としている」と批判していますが、これも曲解でしょう。


「朝鮮・韓国を出自とする芸能人・スポーツ選手にあこがれる」の箇所は私も「?」と思いました。この部分について「朝鮮・韓国を出自とすることを理由に芸能人・スポーツ選手にあこがれる、という話は聞いたことがない」などと週刊新潮は述べています。しかし「朝鮮・韓国を出自とすることを理由に」との記載はありません。


全体を読んで、「自虐史観」とも思いませんでした。
週刊新潮の記事は、言いがかり又は曲解でしかありません。


自虐史観」という言葉を用いる人々には「史実を無視して日本の過去を正当化又は美化しようとする傾向」を感じます。
「どの国も、どの民族も、多くの罪を背負っている」というのが私の史観です。
http://d.hatena.ne.jp/psw_yokohama/20090308/p1


雁屋氏ブログの今日付けの記事で、「Googleで私の名前を引いてみてください。すさまじい数の私にたいする誹謗中傷の文章が並んでいる」とあったので検索してみたのですが、確かに「2ちゃんねる」には雁屋氏を誹謗中傷する書き込みが相当行なわれているようです。
http://kariyatetsu.com/nikki/1179.php


「ここまで、日本人知的水準が下がったのか」と雁屋氏は嘆いていらっしゃいますが、私の思いも同じです。


今回の件で、世襲議員等を批判する雁屋氏の痛快な記事も見付けましたので、最後にご紹介しておきます。
http://kariyatetsu.com/nikki/1141.php