自殺の要因は、日本社会の在り方自体!


「平成21年版自殺対策白書」で、昨年まで11年連続で国内の自殺者が3万人を超えたこと等が報告されました。
http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/whitepaper/index-w.html


その自殺者数がいかに多いか、NPO法人ライフリンク」のWebサイトを読むと改めて思い知らされます。
「毎日1000人もが自殺を図っていることになる」
http://www.lifelink.or.jp/hp/realities.html


自殺対策白書に自殺率の国際比較がありますが、それによると、日本は世界第8位。
上位10カ国のうち、日本及びガイアナ以外は旧ソ連又は東欧諸国です。
韓国が11位になっていますが、日本独特の文化的要因があることが推測できます。
http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/whitepaper/w-2009/pdf/gaiyou/pdf_gaiyo/g04.pdf


以下のWebサイトで、日本の自殺率の高さには「自殺によって自身の名誉を守る、責任を取る、といった倫理規範として自殺がとらえられている」「日本社会は失敗や破産の恥をさらすことから立ち直ることをめったに許容しない」という社会的背景が指摘されています。また、外国でのアルコールの影響についても述べられています。

 WHOのデータ公表を受けて毎日新聞2004年10月2日では自殺に関して各国駐在員の報告をまとめている。この記事などから各国事情についてコメントする。(主要国の自殺率長期推移については図録2774参照)

−ロシア・リトアニア
 旧ソ連に属する両国では男性の自殺率が女性の約6倍と高く、特に45〜54歳の自殺率が高い。体制移行に伴うストレス増大の影響からか、男性の自殺の原因はアルコールが筆頭にあげられている。ロシアでは男性の平均寿命が58.4歳と極めて低く(2002年データ、WHOによる。女性は72.1歳)、異常な寿命低下が厭世観をさらに募らせている悪循環の存在を指摘する人口学者もいるという。もっとも、旧ソ連地域ではソ連時代の1980年代から自殺率は世界の上位にあり、91年末のソ連崩壊に伴う社会混乱にだけもっぱら要因を求めることは出来ない。

フィンランド
 フィンランドは自殺率(10万人当たり自殺者数)が1950年の15.5から徐々に上昇し、90年には30.3の高率となり、ハンガリーなどと並ぶ自殺大国となった。狩猟に多くの国民が親しむ国柄ゆえ、銃の所持率が高いうえ、男性は「たくましくあれ」と育てられ、周囲に相談する習慣がなかったことに高い自殺率の原因が求められた。政府は86年から対策に本腰を入れた。96年までに自殺者20%減の目標を掲げ、各界の専門家を動員し、87年の自殺者の家族全員に対する調査による要因の洗い出しを踏まえて、未遂者への公的ケア、アルコール過剰摂取防止など多くの行動計画を策定し、それらを実施に移した結果、現在では、日本を下回る世界15位の20.1人にまで自殺率を低下させることに成功した。

−日本
 日本の自殺率の高さについては、WHO精神保健部ホセ・ベルトロテ博士はこう言っている。「日本では、自殺が文化の一部になっているように見える。直接の原因は過労や失業、倒産、いじめなどだが、自殺によって自身の名誉を守る、責任を取る、といった倫理規範として自殺がとらえられている。これは他のアジア諸国キューバでもみられる傾向だ。」こうした点は当の国の人間では気づきにくい見方かと思われる。(自殺許容度と実際の自殺率との相関を図録2784に掲げた。)
 英エコノミスト誌(2008.5.3)は女子生徒の硫化水素ガス自殺(4月23日)の紹介からはじまる「日本人の自殺−死は誇らしいか」という記事で日本の自殺率の高さについて論評している。経済的な要因についてもふれているが、記事の主眼は日本人の文化的な要因、あるいは社会的特性であり、上記の見方と共通している。「日本社会は失敗や破産の恥をさらすことから立ち直ることをめったに許容しない。自殺は運命に直面して逃げない行為として承認されることさえある。サムライは自殺を気高いものと見なす(たとえ、それが捕虜となってとんでもない扱いを受けないための利己心からだとはいえ)。仏教や神道といった日本の中心宗教は明確に自殺を禁じていたアブラハム系信仰と異なって、自殺に対して中立的である。」日本政府は9年間に自殺率20%減を目標にカウンセリングなどの自殺対策に昨年乗り出したが、重要なのは社会の態度であると結論づけている。「一生の恥と思わせずにセカンドチャンスを許すよう社会が変われば、自殺は普通のことではなくなるであろう。」

http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/2770.html


日本でもアルコール依存症が自殺の要因になっている可能性について「自殺予防総合対策センター」が提言を行なっています。

 自殺既遂者の23%に、死亡1年前にアルコールのために仕事に支障が出たり、家族を心配させたり、内科疾患を呈するといった現象が認められましたが、そうした方はいずれも仕事を持つ中高年男性でした。

(中略)

 海外では、アルコール依存はうつ病と並んで自殺に関係する精神疾患として知られています。また、多くの国で国内アルコール消費量は男性の自殺死亡率と正の相関関係にあります。
 アルコールは衝動性を高め、「死にたい」という気持ちを行動に移す危険を高めます。悩みを抱えた人がアルコールを摂取すると、自暴自棄的な傾向を助長します。また、不眠に対してアルコールで対処しているとかえって不眠が悪化します。さらに、つらい気分を紛らわすための習慣的な大酒はうつ病を悪化させるだけでなく、うつ病を誘発することもあるのです。

http://ikiru.ncnp.go.jp/ikiru-hp/index.html


ジャーナリスト・高世仁さんのブログに、「失業率と自殺率」と題した記事が掲載されています。

失業率と自殺率に相関があるなんて、当たり前じゃないかといわれるかもしれない。しかし、そうでない国もある。朝日のコラムがあげていた国は、フィンランドスウェーデン

フィンランドでは、90年から93年にかけて失業率が3.2%から16.6%に急上昇したのに、自殺率はむしろ下がった。

スウェーデンでは、91年から92年にかけて失業率が2.1%から5.7%へと急増したのだが、ここでも自殺率は低下している。

積極的な雇用創出などの社会政策が大きな役割を果たしているようだ。

保育所を整備しても少子化傾向をひっくり返せない。だってまともな働き口がなければ、そもそも結婚したり子どもを産んだりできないではないか。それと同じで、「心の健康相談ダイヤル」で自殺を防ぐというのは、まさに後追いの「対策」であって、失業したら生きていけないなんていう、今の社会を変えなくてはならない。

http://d.hatena.ne.jp/takase22/20091122


ジャーナリスト・有田芳生さんの「有田塾」で聴いた小説家・服部真澄さんの言葉を思い出しました。
「今の日本には、様々なセーフティーネットがある」
「おカネで自殺するのは、あまりにも命がもったいない」
http://d.hatena.ne.jp/psw_yokohama/20080525/p1


日本には様々な公的扶助等の制度があるので、「失業したら生きていけない」と決め付けるのは必ずしも適切ではありません。
しかし、「失業したら生きていけない」と思い込んでも仕方ないような状況はあります。そのような社会の在り方自体が大勢の人々を自殺に追い込んでいるのでしょう。
高世さんが仰るように「今の社会を変えなくてはならない」のです。


フレキシキュリティ(柔軟な雇用調整を可能にし、セーフティーネットを充実させる)及び労働時間制限によるワークシェアリング等の根本的変革を行なえば、自殺対策ばかりでなく、過労死防止及びワーキングプア対策にもなり、失業率低下、出生率向上及び社会全体のメンタルヘルス改善等につながることでしょう。
http://d.hatena.ne.jp/psw_yokohama/archive?word=%a5%d5%a5%ec%a5%ad%a5%b7%a5%ad%a5%e5%a5%ea%a5%c6%a5%a3


今の「生きにくい社会」から「生きやすい社会」に転換させなければいけません。