ワークシェアリングとフレキシキュリティ(2)


民主党代表の小沢一郎氏が、元日に出演したインターネットの公開生番組で「ワークシェアリング導入」及び「労働者派遣法の抜本見直し」に言及したとのことです。
http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20090103AT3S0200O02012009.html


先月、民主党は「次期総選挙で民主党が圧勝する」とする情勢分析をまとめていたそうですが、それを実現し、新党日本などとの連立政権で「ワークシェアリング導入」及び「労働者派遣法の抜本見直し」に着手してもらいたいものです。
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090103/stt0901030040000-n1.htm


毎日新聞では、非正規社員の大量失業について「識者の処方箋」を掲載しています。

 ◇失業者は「被災者」だ−−浜松大准教授・柴崎孝夫さん(57)
 トヨタ自動車は、安い部品を効率的に調達する「カンバン方式」を徹底追求して生産性を高め、世界的な企業に成長した。日本の企業は人材確保にもこの方式を導入し、非正規社員を増やしてきた。それが、今回の不況で失業者の急激な増加を招いた要因だ。

 企業はグローバル経済に対応するため、合理化に走った。中高年社員のリストラを進め、人材を派遣やパートのような労働力で補った。人件費が安い中国の経済発展で、より低コスト意識が強くなったことも大きい。規制緩和の影響もあり、非正規社員は労働者全体の3分の1に当たる1700万人にまで増加した。

 景気に関係なく、企業は繁忙期に多くの従業員を雇い、仕事が少ないと余剰人員をカットする。その調整弁の役割を、非正規社員は背負わされている。企業の意向一つで失業し、生活が不安定になる。失業と同時に住まいを失う人も珍しくない。人をモノとして扱う企業の姿勢が、労働者の生存権をも危うくしている。

 企業の論理からすれば、商品が売れなくなった時に、大量の在庫を抱えないよう生産調整を行い、余剰人員を削減するのは当然かもしれない。

 正社員が多かった時代は、給料カットや株主への配当金の引き下げなどで乗り切ってきた。いまは非正規社員の解雇で調整が利く。固定経費だった人件費は、流動的な費用になっている。

 だが、目先の利益を確保することが、本当に企業の発展につながるのか。解雇された労働者は収入が断たれ、物を買わなくなる。企業の業績向上に不可欠な消費も冷え込む。結局、購買力を確保するには雇用を守るしかない。企業には先を見据えた対応を心がけてもらいたい。

 失業者に対するセーフティーネットの構築には、膨大な資金がいる。大企業は雇用を守ることで、自らの社会的責任を果たすべきだ。失業者を生むことは反社会的な行為と考えてほしい。

 失業者を臨時職員で採用する自治体も出始めた。大量の失業者が出ることは、大災害と同じだという心づもりで、支援策を拡充する必要がある。失業者一人一人が「被災者」という考えで取り組みを進めてもらいたい。

 セーフティーネットを−−弁護士・中野麻美さん(57)
 政府は近年、民間活力を導入すれば雇用や福祉の向上にもつながるとして規制緩和を進めてきたが、それが裏目に出ている。派遣など非正規で働く人を中心に失業が続出し、今は最初の小爆発に過ぎないのではないか。生活を保障したり、次の職につなげるセーフティーネットが必要なのに、ほとんど整備されていない。

 06年に偽装請負が社会問題になり、多くの企業は請負を派遣に切り替えた。派遣期間は原則1年、特別な手続きを経ても上限は3年で、製造業派遣の多くが09年で違法な状態となる。この「09年問題」を前に、製造業の「派遣切り」は直接雇用を避けたい企業が不況を口実に進めているとの見方もできる。

 期間従業員の契約期間中の解雇も相次いでいる。期間従業員派遣社員も、最低でも残りの契約期間中の賃金が支払われるべきだ。多くの人々が職を失っている今、緊急的な対策として、まず生活の基本となる住居の確保が必要だ。だが転居は労働者の負担が大きい。継続して住まう保障があってこそ、安心や明日に向かうエネルギーが生まれる。

 本来、派遣業者はハローワークと並んで働き手と仕事をマッチングし、生活の安定に寄与する役割を果たすからこそ、その存在が認められたはず。それが失業させたうえに住まいから追い出してしまうようでは本末転倒だ。失業給付も登録型派遣労働者にとって1カ月の待機期間が設けられるのは生き死ににかかわる問題で、迅速な受給体制が求められる。

 中長期的には規制緩和政策の見直しが不可欠だ。市場原理に任せると、人間の労働は一般の商品より買いたたかれ、安い賃金で使い捨てにされる。市場原理にワンクッションおいてだれもが安心して働ける仕事を保障するためのルールやセーフティーネットの構築が課題だ。

 派遣先が決まった時だけ働く「登録型派遣」を認めてしまった労働者派遣法には基本設計上の欠陥があった。常用雇用を原則とすべきだ。また「ワークシェアリング」が本格的に目指されるべきだ。そのためにも、政治がリーダーシップをとって新しい時代にふさわしいルールを作ること。今は厳しくても頑張ろうという社会に、きっとなるはずだ。

http://mainichi.jp/life/job/news/20081228ddm010040013000c.html


柴崎氏の意見には、疑問があります。
「企業の論理からすれば、商品が売れなくなった時に、大量の在庫を抱えないよう生産調整を行い、余剰人員を削減するのは当然」
そう、当然なのです。
だからこそ、以下のように「企業の努力」を求めたところで、事態はほとんど改善しない可能性が高いでしょう。
「だが、目先の利益を確保することが、本当に企業の発展につながるのか。解雇された労働者は収入が断たれ、物を買わなくなる。企業の業績向上に不可欠な消費も冷え込む。結局、購買力を確保するには雇用を守るしかない。企業には先を見据えた対応を心がけてもらいたい。
失業者に対するセーフティーネットの構築には、膨大な資金がいる。大企業は雇用を守ることで、自らの社会的責任を果たすべきだ。失業者を生むことは反社会的な行為と考えてほしい」


中野氏の仰るように、いま「政治がリーダーシップをとって新しい時代にふさわしいルールを作ること」が求められているはずです。
多くの人々が住居をも失ってしまうような現状は、すぐに変えていかなければならないのですが、それには法律による強制力が必要です。
努力に期待するだけでは、時間がどれだけかかるか分かりません。


連合会長の高木剛氏も、今日の会見で「ワークシェアリング導入の検討」に言及したようです。
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2009010500765
何とかのひとつ覚えのように「賃上げ」ばかり唱えていても、過労死もワーキングプアも無くなりません。