民主主義のコスト


国会議員の定数および歳費(給与)等の額は、何かがあれば「削減しよう」などという話がすぐに出て来ます。
「民主主義の実現のために必要な国会議員の定数」「議員活動に必要な経費額および業務内容に見合った報酬額」についての国民的合意があれば、そうはならないはずです。

民主党税制調査会藤井裕久会長は18日のNHK番組で、東日本大震災の復興事業に必要な財源を確保するための臨時増税や、社会保障制度維持のための消費税率引き上げに関連し、「国会議員の定数削減は増税と同じ次元で考えないといけない」として、増税する際には定数削減も実施すべきだとの考えを示した。

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2011091800059

 東日本大震災の復興財源に充てるため、国会議員歳費を衆参両院とも1人当たり300万円削減する国会議員歳費減額特例法は31日、衆参両院の本会議で可決、成立した。

 4月から9月までの6カ月間、各議員の歳費を毎月50万円減額し、総額は約21億6千万円。年間ベースの削減幅は約14%となる。

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110331/fnc11033122310016-n1.htm

 枝野幸男官房長官は1日の記者会見で、閣僚給与のうち毎月50万円を国庫に自主返納すると発表した。同日の閣僚懇談会で決めた。東日本大震災の復興対策の財源に充てるため国会議員の歳費を半年で計300万円削減する国会議員歳費減額特例法が3月31日に成立したが、閣僚については月額約150万円の給与がこのまま支給される仕組みとなっているため、自主返納の形で減額する対応を取った。閣僚はすでに歳出削減の一環で給与の1割を国庫に返納している。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110401/plc11040112120015-n1.htm


そもそも、「議会制民主主義とはおカネがかかるものである」ということを認識しなければなりません。衆議院議員総選挙または参議院議員通常選挙を1回行なうだけでも、莫大な公金が消えてしまいます。もちろん無駄は省くべきですが、非民主的体制がイヤなのであれば、民主主義のコストは甘受すべきでしょう。


「国民が選挙で政治家を選んでいるため、『政治主導』(政治家主導)は『国民主導』である」と、元民主党代表・小沢一郎氏はしばしば語っています。
米国では、国会議員ひとりに数十名のスタッフが付いているそうです。日本で政治主導を実現するためには、議員ひとり当たりの定数がわずか3名の公設秘書だけでは全く無理なので、私設秘書を雇うことになります。様々な調査活動を行なうにも当然おカネがかかります。
したがって、国会議員の実質的収入は「働かないほど増える」仕組みになっています。


与党時代の自民党議員は、多額の企業献金を得られることによって裕福になったのですが、基本的に「真面目に働く国会議員の実質的収入は一般の会社員と比べても高くない」ことを、政治家はもっと周知させようとしなければいけません。


日本の国会議員の定数は、米国と比べれば多すぎるようにも思えます。歳費等も、私設秘書を雇わないのであれば高額すぎるかもしれません。
しかし、国会議員の定数および歳費等を削減するのであれば、同時に公設秘書の定数を国会議員ひとり当たり10名程度まで増やすべきです。
それが行なわれないまま国会議員の定数および歳費等が削減されれば、政治主導実現はますます困難になるでしょう。


官房長官藤村修氏の「秘書給与詐欺疑惑」が報じられていますが、国会議員が「あまり旨味のない商売」であることが背景にあるのかもしれません。
http://gendai.net/articles/view/syakai/132644
http://gendai.net/articles/view/syakai/132689