「不偏不党」ではない検察およびマスメディア


元検事・三井環氏のインタビュー記事。
検察が民主党を執拗に攻撃し続ける最大の理由は、三井氏の指摘する「組織防衛」および「自民党への借り」なのでしょう。

「『不偏不党』の伝統が破られた」と語るのは、元検事の三井環氏だ。三井氏は、検察の裏金作りを内部告発したため、口封じとして逮捕され、収賄罪などで有罪判決を受け、今年1月に満期出所した。

同氏は、検察の政治干渉について、「裏金作りのもみ消しで自民党に借りができたために、不偏不党の不文律が破られた」と主張する。

(中略)

三井…検察は自民党に「借り」があるからだ。2001年、原田検事総長(当時)が森山法相と共に「裏金作りは事実無根」と記者会見して以降、隠したい裏金作りが検察の弱みとなっている。小泉政権が疑惑もみ消しに協力し、以降、自民党は、検察の捜査に影響を与えてきた。

安倍政権は、自らの北朝鮮政策に反して朝鮮総連に協力した元公安調査庁長官・緒方重威を、詐欺罪で逮捕・起訴させた。これは緒方氏自身が語っているように、官邸筋が主導した逮捕・起訴だ。

麻生政権は、衆院選前に小沢代表(当時)の公設秘書を政治資金規正法違反で逮捕・起訴させた。この逮捕は、「選挙に影響を及ぼす時期に強制捜査はしない」という検察の鉄則を破ってまで実行された。支持率が10%を下回り、末期症状を呈していた麻生政権からの働きかけがなければ、あり得ない逮捕だ。

(中略)

三井…検察にとって民主党政権は、危険な存在だからだ。自民党とのつき合い方はよく知っている検察だが、民主党は未知の部分が大きい。

特に「小沢は危険だ」と見られている。総選挙前に秘書を逮捕された小沢は、「検察との全面対決」を掲げ、検事総長の国会承認案件化や民間人の起用も口にしている。「無駄遣いの一掃」を掲げる民主党が、検察の裏金問題にまで着手するようなことになれば、検察が受けるダメージは極めて大きい。小沢抜きの鳩山政権なら何とかなる、と検察は思っている。

検察による小沢追及については、「米国の意向」という見方や、「官僚層全体からの逆襲」など、様々な分析が語られている。しかし、内部にいた実感からすると、「組織保持」こそが最大の動機だろう。

http://www.jimmin.com/doc/1344.htm


映画監督・森達也さんのインタビュー記事。
オウム真理教信者を不当逮捕する警察だけでなく、それを報じないマスメディアの怖さを改めて思い知らされました。

── 映画「A」で、警察が自分からオウム信者を突き飛ばしておいて、「こいつにやられた」って公務執行妨害で逮捕するシーンがあるじゃないですか。

森 うん。

── その、不当逮捕をカメラに収めた瞬間どう思いました?

森 ひどいことするなあって。同時に、警察はなんでカメラを制止しないでこれを撮らせるのかが不思議でした。

── 向こうが森さんのことをマスコミだと思っていたからですか?

森 たぶん。

── カメラに撮られても問題ないと思っていたのでしょうか?

森 「A」公開数日後の映画館で、映画を見終わった男性グループが「あれくらいのシーンなら俺たちも撮ったことあるぞ」って言いながら出てきたことがある。呼び止めて話を聴いたら、TBSの報道スタッフでした。TBSだけじゃないです。日本テレビもフジテレビもNHKも、あるいは読売も朝日も毎日も、要するにほとんどのマスメディアは、あんな場面を毎日のように目撃していた。撮っていた。

── 撮っているのに放送もしないと。

森 おそらく警察も、撮られたところで放送はしないから大丈夫だろうって思ったんでしょう。当時の新聞を見ればわかるけど、カッターナイフを持っていたオウム信者逮捕とか。駐車場に立ち入ったから逮捕とか。ごく普通に記事になっていました。だれもそれをおかしいとは言わなかった。

── 日常的に行われていたんですね。

森 不当逮捕はもちろん警察の問題でもあるけれど、メディアの問題でもありますね。その異例さが慢性化してしまった。警察長官狙撃事件が時効を迎えた日に警視庁長官が「実行犯はオウム」と記者会見をして大きな問題になったけれど、こうした異例さは以前からいくらでもあった。でもほとんどの人が指摘しなかった。

http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20100415/221588/?P=9