検察、警察は正義ではない!


先日ご紹介した週刊朝日の記事「検察の狂気」を執筆したジャーナリスト・上杉隆氏が、昨日付けのコラムでもマスメディア及び検察を批判しています。

 今週の「週刊朝日」に書いた原稿「検察の狂気」への反応の大きさに驚いている。タイトルは編集部のつけたものであり、筆者の意図は単純な検察批判にはない。むしろ、批判の矛先は報道する側の記者クラブメディアにある。

(中略)

 確かに、小沢一郎も権力である。だが検察もまた国家権力である。なぜ日本のメディアは、双方の言い分を公平に扱って、読者や視聴者に判断を委ねることをしないのか。なぜ日本の記者クラブは、世界のジャーナリズムで当然に行われている権力報道のルールから逸脱することが許されるのか。

 ファクラーのみならず、これは万国のジャーナリストたちが抱き続けてきた日本の記者クラブメディアに対する共通の疑問である。

 検察と司法記者クラブで作られる「官報複合体」の影響力は絶大だ。あらゆる事件に対してそこに疑義を差し挟むことは許されない。とりわけ日本のメディアで仕事をする者は全員、その「権力複合体」の前では、黙るか、傅くか、あるいは排除されるのかのいずれかしか道は残されていなかった。

(中略)

 昨年3月、西松建設事件の発端となる大久保秘書の逮捕された直後、筆者はフジテレビの報道番組『新報道2001』に出演した。

 当日のゲストは、宗像紀夫・元東京地検特捜部検事と、笹川尭自民党総務会長(当時)、小池晃共産党政審会長などであった。

 大久保秘書の逮捕について発言を求められた筆者はこう語った。

「私自身、議員秘書経験がありますが、その立場からしても、政治資金収支報告書の記載漏れでいきなり身柄を取るのはあまりに乱暴すぎるように思う。少なくとも逮捕の翌日から、小沢一郎代表(当時)はフルオープンの記者会見で説明を果たそうとしているのだから、同じ権力である検察庁も国民に向けて逮捕用件を説明すべきだ。とくに記者クラブにリークを繰り返している樋渡検事総長と佐久間特捜部長は堂々と記者会見で名前を出して話したらどうか」

(中略)

 昼過ぎ、スタジオを出た筆者の元に検察庁担当の社会部記者から電話が入った。

「お前まずいぞ、(検察側の)実名を出しただろう。『調子に乗りやがって』と、検察は怒っていたぞ。心配して言ってんだ。本当に、気をつけた方がいいぞ」

 彼の話によると、本気でやろうと思えば、痴漢だろうが、交通違反だろうが、あらゆる手段を使ってでも、狙われたら最後、捕ってくるというのだ。たとえば道を歩いていて、他人の敷地に間違えて足を踏み入れただけで不法侵入の疑いで持っていかれるかもしれないということだった。

 繰り返すが、小沢幹事長も公人であり権力であるが、検察も同じく公的機関であり国家権力なのだ。その一方を大々的に実名で報じておいて、一方を隠し、守り通す。

 記者クラブの持つその精神の方が、明らかにアンフェアだと筆者は思うのだが、日本の報道界ではそうした意見は聞き入れられないようだ。

(中略)

 そもそも捜査が順調な場合には、検察は絶対に情報を洩らさない。筋のいい事案を追っているときは、たとえば朝刊に「きょう○○を逮捕へ」という具合に、結果が出た段階で初めて世間に知らされる。

 ということは、事前にメディアに捜査情報が漏れる場合は、捜査が芳しくない状況にあるか、あるいは「死に筋」であったりする。つまり、リークによって局面を打開するためにメディアを利用するのだ。

 この1年弱の小沢報道も同様の可能性が高い。贈収賄斡旋収賄、脱税などの文字が躍り続けているが、現時点では、元秘書と現職秘書の政治資金規正法違反にぎすない。

http://diamond.jp/series/uesugi/10110/


元編集者・五十嵐茂さんも、ジャーナリスト・有田芳生さんのブログでのコメントで、問題の本質を鋭く指摘されています。

これだけ毎日毎日、テレビをつけ、新聞を開けば、「政治とカネ」疑惑ムードがかきたてられるなかで、今、内閣支持率が低下しているのはやむをえないでしょう
(中略)
いくつかの虚偽記載以外は、すべて「そう疑われる」とか「そう言われている」などという話から一歩も進まず、公共事業受注“決定”に“関与”した見返りの政治献金だったという本丸についての“具体的決定的証拠”がいつまでたっても誰からも出されないままでの“疑惑祭り”状況です。2チャンネルも真っ青か(爆)。これはニッポン・ジャーナリズムがこれまで何回もそこになだれ込み、反省もしてきた総翼賛体制ではないでしょうか。さすがに「朝日新聞」はそれに気づき始めたようですけど

http://saeaki.blog.ocn.ne.jp/arita/2010/01/61_2db0.html#comment-24080305


鈴木宗男氏(衆議院議員、新党大地)及び藤原新也氏(写真家、作家)の日記も必読です。
http://www.muneo.gr.jp/html/diary201001.html
http://www.fujiwarashinya.com/main.html


容疑者取り調べの「可視化」(全過程の録音及び録画)を実現する法案の今国会での提出を民主党が検討していることを「検察への圧力だ」と批判するメディアもありますが、馬鹿げた話です。
可視化法案は、昨年4月に参議院に提出され、野党の賛成多数で可決(その後廃案)されているのです。
昨年の衆議院選挙での民主党マニフェストでも、可視化を実現すると記載されています。
民主党幹事長・小沢一郎氏関連捜査への影響ばかりを指摘し、マニフェストに掲げられていたことには触れないメディアは、検察の操り人形のようです。
政治家が検察に関与することが問題視されるのであれば、取り調べの可視化はなおさら必要です。
可視化が行なわれておらず、マスメディアも検察へのチェック機能を果たさない現状こそが問題なのです。
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2010012200614
http://www.sannichi.co.jp/local/news/2010/01/22/4.html


政府又は与党で批判されるべきは、昨年10月に可視化の省内勉強会を設置した、法務大臣千葉景子氏でしょう。
参議院で可決し、マニフェストで国民に約束したのに、改めて勉強会で検討とは矛盾しています。
http://www.47news.jp/CN/200910/CN2009101301000258.html


戦後、大きな冤罪事件だけでも数百件の冤罪事件が起こっているそうです。
可視化を実現すれば、冤罪は相当減らせるはずです。
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/33068.html


過去の冤罪事件の記録を調べると、捜査当局の恐ろしさを感じずにはいられません。
今回の小沢氏「疑惑」関連報道も、上杉隆氏の指摘するとおり、戦前の「大本営発表」のようです。
冤罪事件のひとつ、駐在所でダイナマイトが爆発した「菅生事件」は、日本共産党関係者を弾圧する目的の警察による自作自演だったことが強く疑われますが、ダイナマイトを駐在所に運んだ警官は、その後罰せられるどころか大出世したとのことです。
その菅生事件に関するシンポジウムが来週土曜日に行なわれます。有田さんを始め、複数のジャーナリストが参加されます。
http://www.labornetjp.org/news/2010/1263186171892staff01
http://100.yahoo.co.jp/detail/%E8%8F%85%E7%94%9F%E4%BA%8B%E4%BB%B6/
http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/local/news/20100122/271976
http://100.yahoo.co.jp/detail/%E4%B8%8B%E5%B1%B1%E4%BA%8B%E4%BB%B6/
http://100.yahoo.co.jp/detail/%E4%B8%89%E9%B7%B9%E4%BA%8B%E4%BB%B6/
http://100.yahoo.co.jp/detail/%E6%9D%BE%E5%B7%9D%E4%BA%8B%E4%BB%B6/