最近の精神障害関連の報道より


時事通信の記事(14日)

 厚生労働省有識者検討チームは14日、精神障害者の強制入院制度の見直し案をまとめた。家族と患者の関係悪化などを防ぐため、強制入院への「保護者」の同意を不必要とし、医師の診察だけで入院させられるようにする。家族の負担軽減が狙いだ。今後、現行法の改正や新法制定を検討し、来年の通常国会への提出を目指す。
 現行制度では、症状の自覚のない精神障害者を強制的に入院させるには、必要な医療を受けさせたり、財産を守ったりする保護者の同意と、精神保健指定医の診察が必要。ただ、ほとんどの場合、保護者は家族が務めるが、「入院に同意したことで患者との関係が悪化する」などの問題点があり、改善が求められていた。

http://jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2012061400978


厚生労働省有識者検討チーム」の資料と思われるものが、公開されています。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001zwut-att/2r9852000001zx2u.pdf


精神科への入院は、主に「任意入院」「医療保護入院」「措置入院」の3種類(資料2頁)です。他に、一時的な入院として「応急入院」「緊急措置入院」もあります。
任意入院以外の入院には強制性が伴いますが、時事通信の記事での「強制入院」とは医療保護入院を指しています。時事通信の不正確な表現には、問題があります。


資料の10〜12頁に、家族の同意を不要とすることの利点および欠点が記載されています。
現在は「当該精神障害者又はその扶養義務者が負担する」(精神保健福祉法第四十二条)ことになっている医療保護入院の費用をどうするのか、時事通信の記事では分からないので、気になるところです。資料12頁では、「医療保護入院による医療費自己負担は、粗く計算すると、600億円〜800億円程度」とあります。


朝日新聞の記事(14日)

 厚生労働省は、新たに精神障害者の採用を企業に義務づける方針を固めた。身体障害者に加え、知的障害者の雇用を義務化した1997年以来の対象拡大になる。障害者の社会進出をさらに促す狙いだ。企業に達成が義務づけられている障害者雇用率は、上がることになりそうだ。

(中略)

障害者雇用率〉 義務づけの対象は従業員56人以上の企業(来年4月からは50人以上)。達成できないと、従業員201人以上の企業の場合は、不足する1人につき月5万円を国に納付しなければならない。昨年6月時点では、対象の約7万5千社のうち、達成企業は45.3%。率は法律で少なくとも5年に1回、見直すことになっている。

http://www.asahi.com/job/news/TKY201206130859.html


西日本新聞の記事(6日)

障害者の法定雇用率  厚生労働省の見直し案を5月末に労働政策審議会の分科会が了承済み。政府は近く閣議決定をし、2013年度から適用される予定。民間企業に義務付ける障害者の法定雇用率を従来に比べ、0.2ポイント引き上げて2.0%とする。見直しは15年ぶり。
 地方自治体など公的機関は2.1%から2.3%に、教育委員会は2.0%から2.2%にそれぞれ上げる。障害者雇用を義務付ける企業の従業員数は現在の「56人以上」から「50人以上」に下がる。

(中略)

 厚労省によると、雇われている障害者の8割近くは身体障害者。同省は「重度の知的障害者精神障害者の就業が進まない」と懸念している。

 障害者雇用促進法は、一定割合以上の身体・知的障害者の雇用を企業に義務付け、精神障害者保健福祉手帳を持つ精神障害者も雇用義務の対象ではないが、雇用率には算定できるとしている。だが精神疾患の患者は08年に約323万人いたが、手帳を持つ人は約48万人にすぎない。

http://www.nishinippon.co.jp/wordbox/word/6732/8955


障害者雇用促進法で、身体障害者および知的障害者が雇用義務の対象とされているのに、精神障害者が除外されているのは、国家が精神障害者への差別を助長していると言わざるをえません。民法第七百七十条の規定よりはマシですが。


産経新聞の記事(先月29日)

 統合失調症鬱病などの精神疾患をかかえる人たちは、糖尿病や高血圧、心臓疾患などの身体合併症を発症する割合が高いとされる。原因は、薬の副作用や不適切な使用のほか、運動不足や不規則な睡眠など生活習慣の問題が絡む。

(中略)

 英国で昨年9月に発表された疫学調査では、精神疾患患者の退院後死亡率は一般人の2倍で、特に循環器、呼吸器疾患による死亡が多かった。

 「予測して防ぐ抗精神病薬の『身体副作用』」(医学書院、2520円)などの著書がある吉南(きつなん)病院(山口市)の内科部長、長嶺敬彦(たかひこ)さんは「抗精神病薬の中には体重増加や高脂血症、高血圧などの副作用を起こすものがある。しかし、精神科医は身体疾患の知識が少なく、合併症の把握に必要な血液検査などをしないケースも多い。入院中でさえ突然死が起きている」と指摘する。

http://sankei.jp.msn.com/life/news/120529/bdy12052908050001-n1.htm


日本では、精神科、神経科または心療内科を備える総合病院が少なく、精神科、神経科または心療内科の大部分が民営なので、精神科、神経科または心療内科の医師たちの意識改革しか改善方法はないでしょう。もちろん、それを政策で促進することは可能です。