自己責任だと自らを責める人々


先週放送されたNHKクローズアップ現代」で、非常に苦しい状況に置かれていても、自分を責め続ける30代の人々の姿を見ました。
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku2010/1001-4.html#thu


その人々は、とても真面目に頑張ってきたのでしょうが、見方を変えれば視野が狭い面があるのではないかと思いました。
努力する、あるいは頑張ることは、ある意味で視野が狭くないとできないからです。


取材対象に、100円のパンを2日に1個食べ、それ以外は何も食べない人がいました。
生活保護制度を知らないのでしょうか。
それとも、生活保護制度を知っていても「自力」だけで暮らそうとしていたのでしょうか。
どちらなのかは、番組を見ただけでは分かりませんが…


私も30代ですが、時々自分を責めることがあります。しかし、私には不真面目な部分があるためか、「全て自分が悪い」と思うことはまずありません。


「自己責任論」には、人間観の問題があります。


無人島で独り暮らしをする人以外に、自力だけで生きている人は存在しません。
個人のパーソナリティー(人格、性格)形成には、遺伝よりも、後天的要素(家庭、社会)の影響の方が大きいというのは、心理学の常識です。
マインド・コントロールの研究では、意思決定においても、本人の自覚はなくても、環境の影響を相当受けていると言われています。
個人に関するどのような出来事も「100%個人の責任」ということはありえず、それが自己責任論の抱える矛盾なのです。


借金を返済するために自殺する人もいるようですが、自己責任論に基づいて「死んで責任をとる」ということなのでしょうか。
自己破産及び生活保護を知らないのでしょうか。
それとも、自己破産手続きを行ない、生活保護を受けることを「生き恥」と考えるのでしょうか。


以前の記事でも取り上げましたが、日本の自殺率は(統計を公開している国では)世界第8位です。
上位10カ国のうち、日本及びガイアナ以外は旧ソ連又は東欧諸国ですので、日本独特の文化的要因があることが推測できますが、そのひとつが自己責任論なのかもしれません。
http://d.hatena.ne.jp/psw_yokohama/20091124/p1


人の生き方は多様です。ひとつの正しい手本などありません。
ジャーナリスト・日垣隆さんのツイッターでの「生きていれば勝ちです」との言葉は、真理だと思いました。


様々な情報に接し、広い視野を持つことは、自分の命を守ることにもなると私は考えています。