「戦国武将人気」と「お上への服従・盲従意識」


近年、戦国武将が人気ですが、その理由が私には分かりません。
アニメまたはゲームで、現在の若者のような髪形の戦国武将が描かれています。史実とはかなり異なる姿ですが、若者には受けるのでしょう。これが人気の理由なのでしょうか。
その影響か、NHK大河ドラマ天地人」は実写でしたが、現代人がまげを付けただけのような髪形の人物が複数登場しました。特に年配の時代劇ファンは、強い違和感を覚えたのではないでしょうか。


戦国武将の代表格が織田信長です。戦国時代は「食うか食われるか」の時代ではありましたが、信長がどれほどの殺戮を行なったのかを鑑みれば、正当化する気にはなれません。外国人の宣教師も、信長が家臣たちを恐怖で支配している様子を記録に残しています。


豊臣秀吉も「低い身分から天下人になった成功者」として日本では英雄視されがちですが、それには信長以上に強い抵抗感があります。天下人になって、庶民のために働いたのでしょうか。秀吉は、刀狩などにより江戸時代まで続く身分を固定化させました。それは社会を安定させたと見ることもできますが、自分以外の庶民の下克上のチャンスを奪ったのです。
しかも、秀吉の晩年の心理状態は、異常と言わざるを得ないものでした。息子を溺愛するあまり、関白の位を譲った甥を切腹させ、その妻子数十名を殺しました。更に、中国およびインドまで支配しようとして、その実現可能性の検証を全く欠いたまま朝鮮出兵を行ない、多数の日本人朝鮮人および中国人が犠牲になりました。どこが英雄なのでしょうか。


昔から日本人は、戦国武将以外にも様々な武士の物語を好んでいました。
平家物語義経記太平記太閤記忠臣蔵などなど。
物語は、人々に関心を持たせるために(商売のために)脚色され、現在でも史実かどうか分からないことが史実として認識されることが珍しくありません。脚色により、主人公の武士は英雄として描かれました。
身分制のある社会においては、当時の庶民では変えられない社会構造を肯定することは、支配される側の人々の生活の辛さを軽減する効果があったはずです。それが、江戸幕府が体制維持のために普及させた儒教思想と相まって、「お上への服従・盲従意識」を社会に定着させたのでしょう。


日本人の「お上への服従・盲従意識」が昔から続いていることが、戦国武将を英雄視させる要因なのでしょう。その意識は、戦後も藩主の子孫が知事に(総理大臣にも)選ばれ、何代も世襲国会議員を務める一族が少なくないことにも表れています。「官僚支配」と言われる状況にもつながっていると思います。


国民の多くが皇室に強い関心を持ち、ほとんど批判しないことにも「服従・盲従意識」を感じます。皇室を賛美するだけのテレビ報道は、北朝鮮のそれと似ていて「気持ち悪い」と思うこともあります。
わずか66年前まで「天皇陛下のためなら、臣民はどのような犠牲でもいとわない国」だった日本。その国民性は、そう簡単には変わらないということでしょう。